こんにちは!SQL 大好き kano-e です。

「データ更新のたびに新規にテーブルを作って、そこにデータを投入したい」とか。
「お客様を DB に登録したら、合わせてそのお客様専用のテーブルを作っておきたい」とか。
「とにかくこの CSV の内容を DB に投入したい、10万件」とか。
こんな状況、意外と遭遇していませんか?

この記事では、そんな時に多分役立つ「Rails で動的にテーブルを作成して、大きな CSV のデータを PostgreSQL にインポートする方法」について、思いつくままにまとめてみました。
合わせて読みたい「動的に作成したテーブルを db/schema.rb に含めない方法」のおまけ付きです。

はじめに

この記事では、以下の内容についてまとめています。

  • Rails で動的にテーブルを CREATE/DROP する
  • テーブルに対応するモデルを用意せずに SQL を組み立て/発行する
  • サイズの大きい CSV のデータを DB (PostgreSQL) に投入する
  • (おまけ) db/schema.rb に特定のテーブルを含めない方法

全体的に Rails (ActiveRecord) と PostgreSQL を使っていることが前提の内容ですので、ご注意くださいませ。

動作確認環境は以下の通りです。

  • Ruby 2.2.3
  • Rails 4.2.4
  • PostgreSQL 9.3.5

動的にテーブルを作成・削除したい

動的なテーブル操作はとても簡単です。

テーブルを作成したい場合は #create_table

ActiveRecord::Base.connection.create_table(table_name) do |t|
  t.string :code
  t.string :name
end

マイグレーションと同じです。

テーブルの削除は、もちろん #drop_table です。

ActiveRecord::Base.connection.drop_table(table_name)

create や drop を繰り返していると「今現在テーブルが存在するか?」を確認したくなると思いますが、その場合には #table_exists? が使えます。

ActiveRecord::Base.cnnection.table_exists?(table_name)

例えば。

Product#name をテーブル名に使ってテーブルを作成し処理が終わったらテーブルを削除したい!」という時は

connection = ActiveRecord::Base.connection
product = Product.take
table_name = "temporary_#{product.name}"

connection.create_table(table_name) do |t|
  t.string :title
  t.string :description
end

connection.execute(...)

connection.drop_table(table_name)

「テーブルが存在しない時だけ、テーブルを作成したい!」場合なら

unless connection.table_exists?(table_name)
  connection.create_table(table_name) do |t|
    t.string :title
    t.string :description
  end
end

ちなみに、これは社内で教えてもらったのですが、「テーブル作成前に既存のテーブルがあれば削除したい!」だけであれば、#table_exists? を使わなくても #create_table の force オプションが使えます。

connection.create_table(table_name, force: true) do |t|
  t.string :title
  t.string :description
end

動的に作成したテーブルの操作

対応するモデルを作成する

動的に作成したテーブルに対応するモデルを作ってしまえば、 ActiveRecord の恩恵を存分に受けられます。

テーブル名が固定できないのであれば、モデルも動的に定義することになります。

klass = Class.new(ActiveRecord::Base) do |c|
  c.table_name = table_name
end
Object.const_set(model_name, klass)

ActiveRecord::Base を継承した Class は ActiveRecord::Base.subclasses に追加されるため、何度も Class.newActiveRecord::Base を継承していると、メモリリークの原因になりかねません。
なので Class.new しないように、 Object.const_defined?(model_name) で確認して定義済みの場合は Class.new せずに Object.const_get(model_name) する、といった工夫が必要です。
(この辺りは社内の知見にだいぶ助けられています)

動的にカラムが変わる可能性がある場合には、Class インスタンスを使いまわしているとスキーマに追随できなくなってしまうため、テーブルを作り直すなどのタイミングで klass.reset_column_information を呼ぶ必要があります。

モデルを作らずに SQL を実行する

モデルを作らずに ActiveRecord::Base.connection.execute で頑張ることも可能です。

SQL 組み立て時に、埋め込む値を適宜クオートするために #quote_table_name#quote_column_name が使えます。
(クオートしなくても動くことは多いですが、クオートする方が安心ですよね)

ActiveRecord::Base.connection.quote_table_name('table_name')
ActiveRecord::Base.connection.quote_column_name('column_name')

これで、それぞれテーブル名とカラム名が、使っているデータベースの仕様に応じてクオートされます。

カラムに入れる値のクオートは、カラム情報が必要になるため、もう一手間かかります。

モデルが存在する場合は ModelClass.column_for_attribute(column_name) でカラム情報を取得できますが、なにせ今回はモデルを作っていません。
なんだかモデルを作りたいような気持ちが湧き上がってきますが、目をつぶって、まずはカラム情報を取得します。

ActiveRecord::Base.connection.columns(table_name)

これで対象テーブルのカラム情報が配列で返ってきます。
配列の中から値を投入するカラムを見付け (#name が使えます)、それをクオートしたい値とともに #quote に渡します。

columns = ActiveRecord::Base.connection.columns(table_name)
column = columns.find{|c| c.name == column_name }
ActiveRecord::Base.connection.quote(value, column)

それらを利用して SQL を組み立て ActiveRecord::Base.connection.execute に渡せば SQL の結果が返ってきます。

connection = ActiveRecord::Base.connection

count_sql = "SELECT COUNT(*) AS #{connection.quote_column_name('count')} FROM #{connection.quote_table_name(table_name)}"
count_result = connection.execute(count_sql)
count_result.first #=> {"count" => 0}

column = connection.columns(table_name).find{|c| c.name == column_name }
update_sql = <<"SQL"
UPDATE #{connection.quote_table_name(table_name)}
  SET #{connectionn.quote_column_name(column_name)} = #{connection.quote(str, column)}
  WHERE #{connectionn.quote_column_name(column_name)} IS NULL
SQL
update_result = connection.execute(update_sql)
update_result.cmd_status #=> "UPDATE 2"
update_result.cmd_tuples #=> 2

行数の多い CSV のデータを DB に投入したい

COPY 〜 FROM 〜 WITH csv

PostgreSQL の COPY コマンドは CSV のパスや標準入力などを受け取って、指定のテーブルにデータをコピーします。

CSV のパスを指定する場合、postgres サーバが直接 CSV を読み込むため postgres サーバからアクセス可能な場所に CSV を置かないといけません。
そのため、 AWS を使っていて EC2 にある CSV ファイルの中身を RDS に投入したい、という時には使えません。

標準入力を渡す場合は EC2 インスタンスからでも psql 経由で、データの投入が可能です。
CSV を元に以下のような SQL ファイルを用意して、

COPY table_name (column1, column2, column3) FROM stdin WITH csv;
data1,data2,data3
...
\.

これを psql に渡します。

$ psql -U username -h host --dbname database --file=/path/to/copy.sql

\copy

メタコマンド \copy も COPY コマンドのように、 CSV のパスや標準入力からデータをコピーします。

\copy に CSV のパスを渡した場合、クライアントである psql がファイルを読み込んでからサーバに送信するので、 AWS を使っていて EC2 にある CSV ファイルの中身を RDS に投入したい、という時にも使えます。

\copy table_name (column1, column2, column3) from '/path/to/copy.sql' with csv;

Rails から実行する

pg gem ではメタコマンドが扱えないため、 Rails からは \copy を手軽に扱うことはできません。
どうしてもメタコマンドを実行したい場合、 Rails から psql コマンドを実行する必要があります。

一方 COPY コマンドですが、 pg gem には #copy_data, #put_copy_data という COPY コマンドを実行するためのメソッドがあります。
なので Rails からは

connection = ActiveRecord::Base.connection
io = File.open('/path/to/copy.csv')
connection.raw_connection.copy_data 'COPY table_name (column1, column2, column3) FROM stdin WITH csv' do
  while line = io.gets do
    connection.raw_connectioon.put_copy_data line
  end
end
io.close

これで実行できます。

postgres-copy という #copy_data を手軽に扱える gem もあります。
実は、この gem のコードを読んでいて、初めて pg gem の #copy_data の存在に気付きました。
その使い方も、かなりの部分をこの gem のコードで学びました。

そんな便利な postgres-copy の詳細な使い方はこの記事では省きますが、モデルのテーブルにデータ投入するだけであれば ModelName.copy_from '/path/to/copy.csv' だけでできるようになります。
今回はモデルを持たないテーブルが対象ですが、その場合も

ModelName.copy_from '/path/to/copy.csv', tabel: table_name, columns: [column1, column2, column3]

のように table_name や columns をオプションで渡すことができます。

postgres-copy を使う利点としては、

  • CSV 以外にも、複数のフォーマットのデータを扱える
  • テーブルスキーマと CSV データのマッピングを手軽に行える
  • CSV の内容に手を加えた上で実行できるようになっている

辺りでしょうか。

逆に、

  • CSV ファイルのフォーマットがある程度決まっていて
  • 手を加える必要なくデータ投入できる

といったケースでは、 postgres-copy の利点が活かせないため直接 pg の #copy_data を使っても良いかと思います。
多少ながら、いくつかの処理を省ける分 postgres-copy を使うよりも CPU 負荷を少なくすることができます。

おまけ: 動的に作ったテーブルが db/schema.rb に含まれて面倒

開発環境で動的なテーブル生成を試していると db/schema.rb に無駄な差分ができてしまい、面倒で悲しい気分になることがあります。

そういう時は ActiveRecord::SchemaDumper.ignore_tables を設定することで、特定のテーブルを schema に含まないようにできます。
(会社の Slack で困ってると呟いたら教えてもらいました!)

複数指定可、正規表現での指定可なので、動的にテーブル名が変わるような場合でも、prefix や suffix を決めておくことで、以下のように指定できます。

# config/environments/development.rb

Rails.application.configure do
  # (略)

  ActiveRecord::SchemaDumper.ignore_tables = [
    /\Aprefix_[a-z0-9][_a-z0-9]+\z/,
    /\A[a-z0-9]+_suffix\z/,
  ]
end

これで、無駄な差分に煩わされなくなりました。

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